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「た、大変申し訳ございません」
「全くさー、こっちにもこっちの都合があるんだからさっさと持ってきてよねー」
「申し訳ございません」
「ったく、早く貸出してよ」
「かしこまりました」
本を持って行って「見つけてくれてありがとうございます」と言われるのかと思いきや批判の声とは思わなかった。一瞬頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けながら貸出作業をし、本を渡した。その人は「ありがとうございました」の一言もなく図書館を出て行った。
あの後、先輩から「複雑なところでもちゃんと探せてえらいよ」とフォローされたが、心は立ち直れなかった。
まだ、図書館で働いて間もない私に対して利用者にはカウンターに立っているのは新人もプロも関係ないのだと痛感する出来事だった。そのことが当たり前のことのはずなのに今更になって気づいたのだ。
「なんで、気づかなかったんだろ……」
その出来後があってから図書館が閉館するまでの少しの時間、カウンターでの対応するのが怖く感じた。一分、いや一秒でも早くここから抜け出したいという気持ちとは裏腹に時はゆっくりと進んでいく。
仕事が終わって家に帰ってきた今、あの時どうすれば良かったのかなんて思い返してしまう。
「どうすれば良かったのよ……。今更過ぎたことを思い返すのは辛いけど次同じこと言われたらなんて返せばいいかもうわかんない」
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