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次の日。
私はカウンター対応にすっかり自信を失っていた。
カウンターで貸出、返却作業をしていても今の私の心はぽっかりと穴が空いていて満たされない。前なら自然と笑顔ができていたのに、今の私は自然に笑うことも出来ない。
「こんな顔で対応しても……」
相手は良い気持ちにならない事なんて、私が一番分かってる。心はモヤモヤして気分が晴れないままカウンターに立つ。
隣にいる先輩はお客様から手渡された本の予約のデータを打ち込んでいる。それを見て一人の男性が私の方にやってきた。
「すみません、この本ここの図書館にありますか」
手渡されたメモには二つの本の名前と著者名が書かれていた。
「今お調べしますね」
カタカタとキーボードを叩き画面に本の題名と著者名を打ち込んでいく。ピッと検索結果が終わる音がして画面を見る。一冊目の本の配架情報を印刷し、二冊目を検索する。もう一冊もあった、あったけれど場所が書庫。
「二冊ともここの図書館にございます。一冊は小説の棚の方に置いてあるのですがもう一冊は書庫の方にございます。小説の棚の方にご案内いたしましょうか?」
「借りたいのはその二冊だけなので二冊とも持ってきていただけるとありがたいです」
「かしこまりました」
私の心臓はバクバクと音を立てていた。昨日みたいなことを言われてしまったらどうしようかと気が気出なかった。
「書庫に行ってきます」
私は先輩に声をかけ、本を探しに書庫に向かった。
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