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書庫の大きな棚に配架されている本を手に取る。バーコードの数字に、本の題名と著者名が間違っていないか確認をして一般の方の棚に向かう。
この図書館を幼い頃から利用しているからだろうか、誰の本がどこに置いてあるかは大まかだけどわかる。
「もう一冊は……え、無い?さっきデータ見た時は貸出可能になってたのに」
バクバクと心臓が急にうるさくなる。この前みたいに遅れてしまうとか、なんで無いんだなんて言われたらどうしよう。いや、落ち着け、心臓。ふぅと深呼吸を一つしてそこの本棚をよく見る。
「あ、あった」
その本を書いた作家さんの本が少なく、パッと見では見当たらなかったのだ。一冊ずつ確認して見つかった時はあってよかったと感じる。
本棚からカウンターの方に少しだけ早く歩いて向かう。私に本をあるかと聞いたお客様はカウンター近くに配架されているCDを見ていた。
「お待たせいたしました、お探しの本二冊お持ち致しました。少し時間がかかってしまい申し訳ありません」
「いえいえとんでもない。時間なんて気にしてないです。本を持ってきてくれてありがとうございます。あなたの優しい対応はとても良かったです。だから自信持ってください」
お客様の声はとても明るいものだった。それに心無しか表情が声をかけた時よりも、嬉しそうだ。
「ありがとうございます」
カウンターに移り、持ってきた本の貸出作業をしているとお客様は言葉を続けた。
「いつもなら一般で置かれてる本は自分で探すんですけどなかなか多くの本を出している作家では無いので見当たらないんですよね。だから見つけてくれてありがとうございます」
初めての言葉だった。優しい対応と口にされたのは。
本を探すだけでどうしてそう言われるのだろうと思ったけれどあの時の持ってきて欲しいというお客様の言葉の意図は自分では見つけられる自信がなかったから。だから私が本を探してきた時にあんなにも嬉しい顔をしたのだ。
私の凹んでいた自信をお客様の言葉が救ってくれた。
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