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どちらにしても今日は無理。
「ごめんなさい。今日は夜からバイトが入ってるので」
「そっか、残念だな。じゃあ明日……は俺が駄目だった。
とりあえず連絡先を交換しようか。
他に行ける日が分かったら連絡してくれるかな?」
その言葉に一瞬だけ迷って返事をする。
「……はい。でも……これもアキラに内緒なんですか?」
少し上目遣いで言う私をじっと見るタカシお兄ちゃんは、困ったように零す。
「ああ、そうだね。そうしてくれると助かるよ」
どうして秘密にするの?
あと、大昔の話だけど一応私はタカシお兄ちゃんにフラれた立場なんだけど。
タカシお兄ちゃんはその辺、どう思って私に接しているんだろう。
それとも沢山の女の子に告白されていたし、私を振った事なんて覚えていないんだろうか?
こんなのが続いたら、勘違いしないように頑張ってもまた勘違いしちゃういそうだよ。
そういうしている間に着いた大学前。
お礼を言って車を降りて、大学の門をくぐると背中から視線を感じて振り返る。
すると、まだそこにはタカシお兄ちゃんがいて、振り返った私に運転席から笑顔で手を振って来た。
目立ち過ぎる車のせいで雨の中なのに人だかりが出来始めているのに。
照れたように小さく手を振り返して、つい心の声が漏れる。
「そんな所にずっといてたら、絶対アキラにバレるじゃん」
でも、なんかそんなタカシお兄ちゃんがおかしくて笑えた。
そんな私を見て、遠くなったタカシお兄ちゃんは目を細めて笑った。
完璧だと思っていたタカシお兄ちゃんの、少し人間味な部分を見た気がしたから。
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