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第一章 私の「相棒」
「きょっ、今日から吹奏楽部に所属しますっ。夏山沙羅ですっ!
楽器はやったことはないのですが、先輩方の足を引っ張らないよう
全力で頑張ります!よろしくお願いしますっ!」
私は、夏山沙羅(なつやま さら)。
今日から念願の吹奏楽部で活動することになった。
「よろしくお願いしますね、夏山さん。
先輩もしっかり教えてあげてくださいね。」
顧問の先生が言う。
だが、先輩たちは興味なさそうに「はいは〜い」と返事をした。
…ん?
「こら、返事はしっかり!貴方達がそんなだと後輩にも影響するのよ?
しっかり先輩としてお手本になりなさい。」
先生は先輩達に注意したが、まるで聞いていない。
こちらをみてクスクス笑っていた。
なんだか、感じ悪いな…。
そんなこと思っていると、一人の先輩が手をあげた。
「せんせーその子どのパートに入れるんですかー?」
そういえばそうだ。
私も聞いていなかったらから気になった。
「夏山さんはクラリネットにいってもらうわ。
去年の三年生が卒業してからガッツリ減ったからね。」
「え〜!?めんどくさ〜」
「他のパートはダメなんですかー?」
うっ…
なんだか、そこまで歓迎されてない感じだな…。
まぁ、途中入部だし受け入れてもらえないのは仕方ない…のかな?
「はいはい、文句言わない。しっかり教えてあげてね。
じゃあ、夏山さん。先輩たちについていってください。」
「は、はい!」
……上手くやってけるかなぁ。
「ここがクラの部室。」
「おぉ……!」
着いたのはなかなか広くて窓から見える外の景色が綺麗なところだった。
普通に良いところじゃん!!
「あと、これ。あんたのクラ。
マイ楽器買うなら顧問に言ってよね。」
「わっ、!?」
放り投げられたのはクラリネットが入ったケース。
これを落としてたらどうなってたことやら…
「ありがとう、ございます…」
お礼は言ったが耳にすら入ってないようだった。
「あたしら、そこまで暇じゃないから独学でよろしく〜」
「えっ…?!」
「あ、あの、持ち方とかぐらいは教えてもらっても…」
「あ"?」
「ひっ…」
あ、無理だ。
「…す、すいません…。自分で調べます…。」
チッと舌打ちをすると先輩は部屋を出て行ってしまった。
楽しみどころか不安が込み上げてきて逃げ出したくなった。
でも、入部して数分で退部なんておかしな話だ。
「……とりあえずよろしくね。」
私は誰もいない部室でケースの中に入っている
『相棒』に挨拶した。
第一章 私の「相棒」
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