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第三章 弱い自分
あれから、先輩たちもましてや同じ学年の子たちもいない部室で
ただ一人、音階の練習、Bからのハ音階、ロングトーン…と
先生から配られた(本当は先輩からもらうんだけど…)楽譜を見ながら
吹いていた。
時々、分からなくなって悩む時もあったが、自力でここまで上り詰めてきた。
私偉くね?………うん、ナルシストはよしとして。
今日は待ちに待った全員で基礎練習!!!
「う〜…楽しみっ!!」
なぜこんなに楽しみかって?
決まっている。
先輩たちに私の努力の結晶を見せつけれるからだっ!!!
「ふふふ…w」
「気持ち悪いぞ……」
「ほぁっ?!」
そこに立っていたのはあの時の謎の先輩だった。
「あ、風のように去っていった先輩。」
「なんだよ、その名前。せめて苗字で呼べよな。」
「知りませんもん。先輩の名前。」
「え?教えてなかったっけ?」
「……。」
嘘だろこの人。人に名前を教えたかも覚えてないなんて。
楽譜覚えれるのか…?それともパーカッションなのか…?
いや、パーカッションでも覚えなきゃいけないよね…。
どうなってんのこの人…。
「教えてなかったんだったら悪かったな。」
「そうですよ。悪いですよ。」
「……一言余計だなお前…。」
「お名前は?」
「………。」
何か言いたげな顔をしていたが「はぁ…」とため息をして
先輩は名乗った。
「俺は、桐島律(きりしま りつ)。ホルンやってる。」
ほう、ホルン…。あのカタツムリみたいな形したやつだな…。
確か、一回聴いた時とっても優しい音色だったなぁ。
……まぁ、もう卒業した三年生の音色だけど。
「よろしくお願いします。律先輩。」
「おう。よろしく沙羅。」
「……前まで夏山だったのに…(ボソッ」
「だってお前が名前で呼んだから俺も名前で呼んだんだよ。
何か悪いか?」
「なら桐島先輩。」
「もう遅い。行くぞ沙羅。遅刻したらあの顧問がキレる。」
「え。」
初っ端から顧問に怒られるのは致命傷では済まない。
それはどうしても避けなければならない。
「はっ、早く行きますよっ!!律先輩っ!!!!」
「…今、律先輩って…」
「黙りやがれくださいっ!!!」
「おまっ、先輩に向かって黙りやがれはおかしいだろ?!」
「…って、早すぎだろアイツっ!!!」
私は先輩をすっぽかして急いで音楽室へ向かった。
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