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「しのよりは、好き」  本当は昭兄と志信のどっちが上とかじゃなくて、好きの種類が違うのだけど。  触れられて緊張してるのを知られるのがいやで、言葉だけでも強気に発したかったが、成長期の声変わりに失敗していたオレの喉からは、高音と低音が入り混じった不安定な声しか出てこない。 「かっわいくねえー」  力んで言わなくてもわかってる。  どうせオレはかわいくなんかない。  志信がいつも言うように、声も変だし、おでこも丸いし、目玉も黒すぎるし、耳も小さすぎる。  モデルとか看護師とか花屋の娘なんかに比べたら、蟻ほどのかわいさも持ち合わせていない。  あごを支える志信の手を払いのけてうつむき、落とした甘い割り箸によじのぼる蟻をにらみつけながら、心の中で悪態をついていたとき――  どん、と地を轟かす破裂音が鳴って、二人同時に顔を上げた。
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