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「かわいい、このアンクレット」
「ほんとだぁ。足首細いから超似合う」
肉を焼く炭火の煙から離れた風上に、若い女の子の人だかりができている。
その輪の中心にいる小西理香が、左足の膝を曲げてみんなが見えやすいように足首を後ろに持ちあげた。
「この白いの真珠?」
「残念ながら本物じゃないけど。イミテーションの安物なの」
「これってもしかして……、志信くんからのプレゼント?」
きゃー、とわく女の子たちに、理香は笑顔を隠すように目の前で手を振った。
「ちがうちがう、自分で買ったの。あたし、アクセサリーショップで働いてるから。社割がきくんだ」
「でも、付き合ってはいるんでしょ?」
「そんなんじゃないよ」
照れたように笑って否定する理香を囲む女の子たちが、また大きな歓声を上げた。
日曜の夕刻、志信の歓迎会をかねてひらかれた町民たちによるバーベキュー大会に、飛び入り参加者が現れた。
太陽がかげり始めた川辺で炭をおこしていると、志信が理香を連れてやってきた。
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