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 大きな岩と縄で繋がれた桶が、川にぷかぷか浮いている。  桶の中には、上流の水で冷やされた小玉スイカが三つ。岩を縛る縄を解いていると、背後から声をかけられた。 「ねえ、ちょっとー」  ヒールの高いミュールで、でこぼこの岩場を登ってくる理香を見つけて背筋が凍る。 「ちょっと、なにして。危ないから――」 「平気。むかしは木登り得意だったんだから」  来ないで、と言おうとしたら、理香が腰に手を当ててオレの言葉をさえぎった。  しぶしぶ下って手を差しだすと、驚いた顔をした理香が手を伸ばしてきた。  川から桶を引き上げていると、岩に腰かけてしばらくだまっていた理香が口をひらく。 「あたしのこと、覚えてる?」  振り返るとこっちをじっと見つめる目と目が合った。  ショートカットがよく似合うたまご型の輪郭にくりっとした大きな目、細く長い脚が小学生のころと変わっていない。  忘れるわけがなかった。
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