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「なんかしゃべれよ」
竹藪に足を踏みいれると、背の高い竹の群集に太陽の光が遮断され、ひんやりと涼しく感じる。
「昭兄って、いつこっちに来るの?」
振り返らないまま尋ねると、背後で志信がふっと笑う気配がした。
「出た、夏生の兄ちゃん病」
しゃべれと言われたからしゃべったら、病気とか言われる。
夏休みに入ってからも昭兄とはときどきラインでやりとりしていたが、まだ忙しいらしく、いつごろこっちに来れるかわからないという。
志信なら最新の情報を知っているかと思ってなんとなく聞いただけなのに、人を病気あつかいして。
そして家に帰ったらまた理香に報告するのだろう。あいつの兄ちゃん病は悪化するいっぽうだ、って。
「なんで機嫌悪いんだよ。生理?」
男に生理が来るのか。
足を止めると、志信がさらに腹立たしい言葉を継ぐ。
「夏生って、昭彦以外のことで俺に聞きたいことってないわけ?」
「……」
志信と対面すると緊張してうまく振る舞えないオレは、心のどこかで優しい昭兄を頼っていた。
多少自覚はあったけど、会えばいっつも不機嫌で口ひらけば昭兄ばっかで、もしそれが不満だったんなら申し訳ない。
そりゃ病気って言われても仕方ない。そうだ、志信はいつも正しい。
わかってる、悪いのは男の志信に恋愛感情なんかもってるオレのほうなんだってことくらい。
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