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「なにそれ」 「だからー、俺と理香が仲良くしてると、夏生が嫉妬するかなって思って連れてきた。もしかして夏生の機嫌が悪かったのってさ、理香にやいてたからじゃねーの?」  図星だろ、と言って頬をつねってくる。 「ちがうよ! しのは、あ、あの人と付き合ってるんでしょ」 「は? またおまえ、町民のウワサ鵜呑みにしてんのか。この田舎者めが」  自分だって元田舎者のくせに、と言おうとしたが、頬を両側から引っぱるから声をだせない。 「いやー、夏生に嫉妬されると気分いいわ」  よく伸びる頬が餅みたいで、真っ赤に染まって熱くなってるからこれぞ焼き餅、と最高にくだらないことを言いながら、志信はやっとオレの顔から手を離した。  赤いのは志信がつねったからだ、と言いかけたが、きっと触れられてない首まで真っ赤に染まってるだろうから、オレは言い返そうとひらいた口を静かに閉じた。 「俺は夏生以外に興味ねーし」  真摯な声にハッとして顔を上げると、まっすぐ見つめてくる志信と目が合った。  周りは竹に囲まれて光が入らないのに、ブラウンの瞳はオレの体を射るように鋭く光っていた。 「なに、言ってんの」 「照れんなって」  ふいに手をとられた驚きで、オレの体は硬直した。  温かい手の中に、緊張で冷たくなったオレの薄い手が包まれてる。  志信はしばらく戸惑うオレを見つめていたが、やがてつかんだ手を引っぱって歩きだした。
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