5/14

194人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
 志信が理香を連れてきた理由をごまかしたことくらいわかってる。  オレに焼きもちをやかせるためだなんて言ってたが、そんなのは嘘だ。  嫉妬させるためだけに理香を利用する。志信がそんな、人を道具みたいに扱う人間じゃないことを、オレがいちばんよく知ってる。  じゃあ真相はいったいなんなのか。  二人が付き合ってるというのは本当に単なるウワサか。  志信が理香を連れてきた本当の理由はなにか。  そもそもここへは理香が来たいと言ったのか、それとも志信がおいでと言ったのか。  オレはそんな頭に浮かんだ疑問を、ひとつも口にだすことができなかった。  見つめられて赤くなって、手を握られて緊張して、おまえ以外興味がないなんて嘘を隠すためのおべっかでとろけてしまう。  どんなに突っ張った態度をとってみせても、志信の言動で簡単にほだされてなにも言えなくなる。  恋するオレは、志信という神の前にひれふす弱者だ。  神の目論見どおり指一本でコントロールされて、志信が隠す秘密を聞きだせなくなってしまうのだから、自分でもちょろいなって思う。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

194人が本棚に入れています
本棚に追加