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駅前に新しくできたラーメン屋で腹ごしらえをしたあと、川でザリガニ釣りをした。
「おねえさーん、冷やしぜんざい、ふたつー」
「はいよー」
昔からよく通っている甘味処のおばちゃんは、おねえさんと呼ぶと白玉を二つ多くサービスしてくれる。
「痩せすぎ。太れ」
そう言うと、志信はおまけの二つ分の白玉を、オレの器に移した。
「あ、りがとう」
「いーえ」
オレは志信にもらったのをほかと隔離して大事にとっておいて、いちばん最後に食べた。
陽が傾いてきたころ、卓球場で本気の卓球勝負をして、引き分けに終わると二人で納得して家路についた。
「寄っていく?」
玄関の前で、ドキドキしながら志信を振り返る。
昨年までは昭兄がいたから、こんなふうに一緒に遊ぶのも家に呼ぶのも全部二人に任せていて、オレは後ろをついていくだけだったから、ここまで緊張しなかった。
伏し目がちに答えを待ってると、志信がオレの額を指ではじく。
「もちろん。当たり前だろ」
志信の遠慮のなさにちょっと笑って、居間に通す。
近所の友人の家に将棋をさしに行くという父さんに墓参りの報告をすると、嬉しそうに笑って家を出ていった。
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