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 父さんが経営する上村煙火は、おもに打ち上げ花火の製造・販売を行っている。  作られた花火玉は、製造工場を持たない全国の企画・打ち上げ専門の業者に販売する。  だが夏になると、上村煙火にも近隣地区から打ち上げの依頼が舞いこんでくる。七月半ばから九月の始めにかけての週末だけ、上村煙火は、近くのお祭りに華をそえる、小規模な打ち上げ業務も受けつけていた。  人手が必要な夏に、昨年まで手伝ってくれていた強力な助っ人が帰還してきたことを、父さんだけでなく従業員のみんなが喜んで歓迎した。 『おまえは嬉しくないのかよ』  横から頬をつねられて仏頂面で振り向いたオレの顔に、志信は左右差のない完璧な顔をわざとゆがめて近づけてきた。  元来が根暗で無口なオレは、志信を前にするといつにも増して、不器用でぶっきらぼうな物言いをしてしまう。 『べつに、ふつう』  そんな突っ張った態度をとりながらも、目が合った瞬間、心臓のほうは命を吹きかえしたように大きく跳ねていた。  オレは頬をつねる志信の手を大仰な仕草で振り払い、うつむいて固く目をつむった。 『なんだよ久々に会ったのに、かわいくねーの』  一年ぶりの予期せぬ再開に、オレの頭と心はパニックを起こしていた。
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