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雷鳴の轟く外は、朝から大雨。
青年団が主催する夏祭りは、明日に延期になった。
急遽、休みになったからって、この雨じゃ外にも出られない。でももし今日が快晴の休日だとしても、オレは外に出る気分にはなれなかっただろう。
三日前のあの日から、オレは志信と会話していない。
赤い目をして寺から帰宅した日の翌日以降、上村煙火の作業場で志信を見つけるたびに徹底的に避けた。
オレは、いち早く窓の外の志信に気づくパートの主婦たちの協力を得て身を隠し、三日間、彼の前に姿を見せずに済んだ。
ケンカ中か、と笑うみんなに苦笑いを返して、そのあとかかってきた電話もメッセージもすべて無視している。
子どもっぽい行動だと自覚しているが、いまは志信と会って、どんな顔でどんな話をすればいいのかわからなかった。
昔から志信はモテモテだったけれど、たくさんのウワサが舞う中、誰かと付き合ってるというはっきりした証拠は表に出てこなかった。
かげでこっそり恋人を作っていたのかもしれないが、事実は一度もオレの耳に入っていない。
志信と理香は、付き合ってる。
それは三日前に自分の目で見た、二人の水子供養がはっきりと物語っている。
なにも知らないでいることが幸福なのだと、いま知った。
遠く離れた場所で、自分が知らないあいだに志信と理香が愛を育んでいたのだと想像すると、嫉妬でつむった目の奥が赤く染まった。
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