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オレに触れるより優しく、彼女に触れるのだろうか。
オレを見るまっすぐな目より真剣みを帯びた視線が、彼女を貫くのだろうか。
止まらない思考に体が震えだしても、オレはそのさきを想像することをやめられない。
志信の大きな手のひらが、彼女の素肌に触れる。
子どもができたのだから、二人はそういうことをしていた、ということになる。
志信はどんなふうに理香を抱いたのだろう。
下衆な思いつきがリアルな映像となって頭の中に浮かんだ。
いても立ってもいられなくなってベッドにもぐりこみ、布団を頭までかぶった。
暗い視界の中、自分の心音と窓をたたきつける激しい雨音が、内と外からオレを追いつめてゆく。
「い、やだ……」
もう限界だった。
この三日間、ずっと混乱しっぱなしで、考えたくもないのに志信と理香のことばかりが頭をよぎる。
もう、この苦の無限ループから解放されたい。
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