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「な、なによ、なんであたしなんかの代わりに死ぬとか言うのよ! 信じらんない……。もう兄弟でバカみたい。血が繋がってんのよ、わかってる? 近親相姦だよ? 弟がかわいい、弟が仕事をがんばってる、弟は料理がうまい……。弟が弟が弟が……って、いい加減うるさいのよ!」 「…………は?」  兄弟? 近親相姦?  いったいなんの話だ。  理香はわんわん声をあげて泣きだした。  もたれかかってくる彼女を抱きとめていると、突然、視界が真っ白に染まる。 「な、に……?」  暗闇から一転、光の世界へ。  理香とオレは同時に顔を上げた。  急激な明暗に痛むまぶたをなんとかこじ開ける。  眩しいのはどうやら、懐中電灯の光のようだ。  気づくと理香とオレは丸い形のスポットライトを浴びていた。 「いた!」  声が聞こえてすぐ、光から解放される。  山道を駆けてきたのは志信と、昭兄だった。 「昭兄!」 「夏生、ただいま。遅くなってごめん」  久しぶりに顔を見た喜びで思わず叫ぶと、となりの理香にふたたびろうそくで背中をはたかれる。  その衝撃で咳きこむオレをおいて、理香は前方へと駆けていった。 「昭彦!」  叫んだ理香が昭兄に体当たりする。  二、三歩後ずさった昭兄は、体にしがみついてくる理香を両腕でしっかり受けとめていた。
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