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「え」  なにこれ。なんで昭兄?  志信はなにしてるの?  探す手間もなく目の前にやってきた志信に、鼻をつままれる。 「なに昭彦の名前だけ呼んでんだよ。俺もいるだろーが」 「んーっ」  そのまま左右にゆすられて、オレは必死で抵抗し、両手で志信の指を鼻からはずした。 「どうした、これ」  濡れた頬に志信の乾いた指が触れる。  涙の理由を聞きたいらしい。 「理香さんが、死ぬとか、言うから」 「ああ」  ああって。  なんだか面倒そうにつぶやいた志信の視線のさきには、さっきと変わらず昭兄にしがみついたままの理香がいる。  そんな二人の様子を呆然と見つめていると、となりから安堵のため息が聞こえてきた。 「これでやっと解放される。一件落着だな」 「へ?」  一件落着どころか、オレの目の前は問題だらけなのだけど。  昭兄と理香のこんな場面を見て志信が傷ついてるんじゃないかととなりをこっそり見やると、どこか妙にすっきりした顔がオレ見返してきた。
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