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「俺がこっちにいる残りの時間、昭彦は理香の相手で忙しいから、夏生は俺といろよな」
「なに、それ。しのは平気なの?」
「なにが?」
「だって、理香さんと付き合ってるのに」
「はあぁ? おまえまだ信じてたのか。おばちゃんたちのウワサ話」
うわー、とオレの顔を指さして、志信が心底あきれた顔をした。
「理香が付き合ってる相手は、俺じゃなくて昭彦だよ」
「え……?」
オレをさしてた志信の指が、前方の号泣する理香をなぐさめる昭兄のほうに移動する。
「ショック?」
「え?」
想像もしていなかった事実を告げられてぼんやりしてるオレに、志信はちょっとふてくされたような顔をしてみせた。
「なにが?」
「大好きな昭彦をとられて」
「それは、べつに、ふつう」
ショックというよりも、ただただ驚いていた。
理香の恋人が、志信じゃなく昭兄のほうだったなんて。
ショックなのは、昭兄が恋人の存在をオレに隠していたことくらいだ。
不満げな顔で前方の二人を凝視していたら、オレの視線に気づいたのか、昭兄が理香の手を引いてこっちに向かってきた。
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