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 理香が子どもをおろしたというウワサは、当たらずといえども遠からずだった。  理香は昭兄とのあいだにできた子どもを両親におろせと命令され、家族と毎日ケンカをしているうちに流産した。  塞ぎこんでいる彼女を志信に預けて休暇を取らせてるあいだに、昭兄は東京で理香の両親と話し合いをしていた。  最初のうちは家の中に通してももらえなかったが、毎日かよいつめ、真摯な言葉を伝えて謝罪することで、このさきも二人が付き合いを続けることを認めてもらうことができた。  そしてついに両親は、理香本人とも仲直りすると約束してくれたという。  どうやら志信は帰省が大幅に遅れた昭兄の代理で、彼女の水子供養に付き添っていただけだったようだ。  明日の朝、父さんに話をするという昭兄と理香は上村家に帰宅し、二人きりにしてやろう、という志信の提案を飲んで、オレは久々に東島家の門をくぐった。
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