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志信はなんで、こんな暗い性格のオレなんかが好きなんだろう。
キスされる直前、そんなことをふと思った。
唇同士がくっつくと心臓がきゅー、としぼられて、固くつむった目の裏に涙がたまっていく。
たぶん、オレがいじわるな志信を好きなのと同じ理由で、志信も根暗なオレが好きなのだろう。
なんの根拠もない、ただ特別だっていうだけの感情。
オレは志信だから好きで、志信はオレだから好き。
唇が触れあっているとわかる、この人じゃなきゃダメだっていう感覚。
「ベロだして」
言われるままにだした舌を歯で噛まれる。
そのまま吸われて、オレは変な悲鳴をあげてしまった。
恥ずかしくて胸を押し返そうとしたら、その右手をぎゅっと握りしめられる。まだ左手が空いていたけど、オレはもう抵抗することをやめた。
キスが気持ちいい。
ひらきっぱなしの口の中に潜りこんできた舌が動きまわる。
少しだけ残っていたレモンスカッシュの後味は、あっという間に志信の味に変わってしまった。
耳にぬくい指が触れると、腰の奥が疼きだす。オレの脳の中の理性をつかさどってる器官が、仕事をやめてしまったみたいだった。
「しの…………」
離れてゆく唇を目で追ってつぶやくと、志信は顔を傾けて、愛おしそうに俺を見た。
「もっとしたい?」
もう、我慢ができない。
怖いし恥ずかしいけどなんとかそれを押し隠してうなずく。
志信がすごく嬉しそうな顔をしたからそれだけで、ああもうなにされてもいいやって思った。
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