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ベッドの中からガラス越しの晴れた空を眺めていると、となりで眠っていた志信が、んーと呻った。
「夏生、起きてんの?」
寝起きのかすれた声がして、背後から腰に長い腕が巻きついてきた。
「おはよう」
ドキドキを隠したまま振り返らないで声をかけると、うなじにキスが降ってくる。
少し前までうるさかった蝉の声が、もう聞こえない。
夏は終わろうとしている。
「いつ帰るの?」
「あと一週間くらいいる。昭彦も来たばっかだし、みんなで遊ぼうぜ」
「うん……」
うなずいてみせたものの、一緒にいられる時間の短さにがっかりしていたら、志信が背後からオレの顔をのぞきこんできた。
「それとも二人きりでずっと過ごす? 一週間、朝も夜も関係なしでやりまくろっか」
「最っ低」
「痛い痛い」
キュッとTシャツの上から乳首をつままれて、オレは背後の志信の胸にひじ鉄を食らわせた。
こっちはしんみりしていたというのに、なんてデリカシーのない男。
「冗談だって。こっち向いて?」
肩をゆらされて、真っ赤な顔をうつむけたままころんと寝返る。
「寂しいな」
真摯な声に顔を上げると、志信と目が合う。
まっすぐ見つめてくる瞳に、嘘はない。同じ気持ちでいてくれることが嬉しくて、微笑みながらうなずく。
志信が優しく髪を梳いてくれる。温かい胸に顔をうずめると、また眠たくなってきた。
夢うつつで微睡みながら、思う。
これからさきはきっと、志信のいる夏が大好きになる。
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