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翌朝目を覚ますと、なんとなくひかりが居なくなってしまったと分かった。まだ美術室に足を運んだわけではないのに、なぜか直観でそう感じた。
行き場のない喪失感を抱えたままリビングへ行くと、私の顔を見た母がぎょっとした表情で話しかけてきた。
「どうしたの、なんか嫌なことでもあった?」
「……いや、別に。何もないよ」
「そう? それなら……いいんだけど」
歯切れ悪く話す母の様子を見るに、今の私はよほどひどい顔をしているのだろう。これ以上詮索されないように近くにあった新聞紙を広げて顔を隠すと、そこには数年前に起きた事件について書かれていた。
”学校裏の神社で起きた悲劇 石段から転落か“
1人の少女が学校裏の神社の石段から転落し、亡くなった。少女の周囲には多くの絵が散らばっていたがどれも故意に塗りつぶされた跡があり、いじめを苦に自ら命を絶ったのではという推測が記載されていた。
亡くなった女生徒は美術部に所属しており、美術室にはまだ描きかけの神社の絵が残されていたという。
小さく乗せられたその神社の写真は、ひかりが描いた絵と瓜二つだった。
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