カーテンが下りているうちに

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授業と授業の合間の休み時間は、一部の浮ついた生徒が急にボールや消しゴムを投げ始めたり黒板に落書きを始めたりと、いつも騒々しい。男子校のせいでむさ苦しさが強いが、ほとんどのことに関心の薄い玉城(たまき)(りょう)の心は、しん、としている。普段と同様その静けさに身も委ねようとイヤホンで耳を塞ごうとした。 「なあ!領!この子めっちゃ可愛いぞ!見てみろよほら!」 その流れに割って入ってきたのは後ろの席に座る幼馴染の内田(うちだ)裕司(ゆうじ)だ。声を弾ませスマホの画面を領に向けている。 「お前ほんとしつこいなぁ...興味ねえって。何回言わせんだ。分かってんだろ」 それを見ることなく手で追い払う仕草をして机に顔を伏せた。近くの女子校の生徒の写真だということは安易に想像できる。 「またー!見てから言えよ!このまま誰とも関わらないで貴重な青春を無駄にするのか!?お前...本当にそれでいいのか!?男たるもの、恋愛の一つや二つ...」 裕司が語り始めるのを無視して領は今度こそイヤホンを着け音楽を再生しスマホのボリュームを上げた。その時、おーい!裕司!新しい子の情報ゲットしたぞ!と誰かが言った。 彼の諦めの悪さはよく知っている。そのうちまた懲りずに別の写真を見せてくるだろうが、今日のところは大丈夫そうだ。領は小さくため息をついた。 彼女探しに躍起になっているクラスメイトの気持ちが全く理解できない。 何でそんなに必死になるんだ?そこまでして女子と一緒にいたいのか?恋愛ってそんなに重要か?そもそも、好きって...恋って何なんだ。昔も今も、俺の心を満たすのは音楽だけ。人付き合いなんて...恋愛なんて、きっと面倒なだけだ。 「マジで!?どんな子!?はー!早く彼女欲しい!」 案の定、声のした方へ飛んで行く裕司を視界の端で捉えてから彼は目を閉じて音の海へ潜った。
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