8月2日

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8月2日

急に暇になった男子高校生が行く所って、ロクなとこじゃないよな。奥田(おくだ)はひとり、先輩達から距離を置いて実感した。 「全然見えねえ」 僕はそんな先輩の姿を見たくなかったのですが、それは。 奥田は溜息を堪えて、周囲を伺う。人が来ないから穴場なのだが、いつ誰が自販機目当てに姿を現すかわからない。 こんなところを知り合いに見られたら。奥田の心配は尽きない。 〇×駅に、パンチラスポットがあるらしい。 体育館の緊急メンテナンスが入って部活がオフになった先輩達は、奥田がふと漏らした一言に食いついた。 「でも、校区外ですよ?」 「校区外だからいいんだろ?」 「でも、〇×ってあそこの最寄りじゃなかったか?」 「あいつはチャリ通だから」 「夏休み中だし」 案内がてら付いて来たのは、奥田だって1人の男子高校生として興味があったからだ。だが、自分以上にテンションを上げて食いつく人間を見せられると、俄然興奮も冷めるものである。 「この暑いのにハイソックスとかご苦労だな」 「俺は白派」 「いやそこは黒じゃないか」 パンツを諦めた先輩達は、足下の観察にシフトチェンジしたらしい。いや、帰りませんか。 「はあー?夏は生足でしょ?!」 ねえ奥田なんて、話を振らないでもらいたい。あたふたする奥田をよそに、ひとりの先輩が鼻で笑った。 「タイツのエロさを知らないとは、お子ちゃまだなあ」 ポージングこそ決まっているが、内容は実にくだらない。 あそこまで脚の線が出る履き物もないだろ?どんな脚をしているか想像するのもイケるし、脚を曲げた時に肌色が見えるのもいいよな。 「脚フェチか」 「キモいわ」 既に好みを晒している彼らも同類だが、ツッコミは不在だった。脚フェチを否定することもなく、男はひとりの女性の脚を指差した。 「俺的には、あれが好みかな」 膝下のスカートから伸びた脚は、白くしなやかだ。単に細いというより、筋肉と脂肪のバランスがいい。 「想像してみ?あの脚に似合うのは何か、膝から上は」 唾を呑んだのは、奥田だけではなかった。 誤魔化すためなのか、先輩達のお喋りが再びヒートアップした。 「いや、でも紙袋のチョイスはない」 「和菓子?おかき?」 「ローファーに柄物のショート丈とか邪道」 脚談義に参加してしまった手前、奥田はひとつずつに相槌を打っていた。だから、気づかなくても無理はないのだ。近づく、人影に。 「あれ?久しぶり。部活休みなの?」 女性の声に肩を大きく揺らしたが、幸い彼女は奥田の知り合いではなかった。目鼻立ちのくっきりした巨乳の美人とお近づきになった記憶はない。 「お前こそなんっ」 顔に動機の色を示したのは先輩達で、中でもうわずった声を上げたのは生足派の先輩だった。 「補習の帰りにお遣いを頼まれてさ。お客さんに持たせるんだって」 顔の横まで持ち上げられた紙袋に、全員見覚えがあった。 視線を下に向けて脚を見てしまうのは、反射的行動と言えよう。 「柄物...」 奥田の呟きに先輩達は一斉に小突いてきたが、女性の耳に届いていなかったのは不幸中の幸いだった。 「えー、奢ってくれるの?珍しい」 彼女は今、生足派の彼にどのジュースを奢らせるかでいっぱいなのだ。 パンツの日
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