壊したいほどに

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いつもの町並みだが、町には誰もいない。 正太(しょうた)は巨大ハンマーを手に握っていた。 細い身体なのに、軽々とハンマーを掲げる。 「これで…壊せるな」 正太は町の真ん中にある高いビルを見た。 町では有名なビルであり、正太が働いている会社だ。 正太はハンマーを両手で振り上げながら、ビルに向かって走り出した。 「ははは!これで…これで!」 ビルの前に着くと、正太はハンマーを思いっきりビルへ振り下ろした。 ビルの壁は大きい音を立てながらヒビが入る。 正太は何回もハンマーでビルを殴り続けた。 壁のヒビが大きくなり、ビルが崩れ始める。 それでも正太は逃げようとせず、ビルを殴り続けた。 「これさえなくなれば…なくなれば!」 ビルは崩壊し、瓦礫が正太の上に落ちてくる。 それでも正太は逃げようとしない。 ビルが崩壊しても、殴り続けた。 跡形もなくなるまで。
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