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そして、この浅葱色の袴の青年は元バイトリーダー、今は私の修行先の神社で働いている八坂修。顔立ちだけは良い、イケメンメガネだが、いろいろと残念なところがあり彼女はいない。
そう私は修行中なのだ。何の因果か、私には人外が見え、かつその人外を倒す伝説の巫女の素質があるらしい。そんな私は人外対策を担うことを条件に、バイトの時給をあげてもらったため、今はその能力を磨く目的で八坂の実家の神社で修行をしているのだ。
ただ今日は修行ではなく、この遊園地に新しいアトラクションを作るための地鎮祭に呼ばれているのだ。いつもよりも二百円高い時給に釣られて、この暑い中わざわざ出てきたのだ。STUFFと書かれたネームタグをもらったので、どのアトラクションにも入れるのだが、さすがに巫女服でアトラクションは恥ずかしい。
そんな事を思いながらかき氷を食べていると、どこかから聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。
「……貧乳じゃい、どこじゃ……」
声の聞こえてきた方向を見ると、この暑いのにスーツを着た中年男性がマスク越しに叫んでいた。
じっと見ていると、不意にスーツの男性と目が合った。
「貧乳じゃい?」
私に疑問系でたずねてから、スーツの男性は軽く首を横に振ると、そのまま歩きはじめた。
かき氷のスプーンがバキッという音をあげて折れた。いや、私が折った。
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