濡れに浸る

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 腰が抜けそうだった。わざわざ聞かれると、答える側の方が恥ずかしくなる。  優しく、優しく、私を抱きしめた。  「お友達から」、などと言って距離を作ったのは、実際に彼がどんな人間なのか分からなかったので妥当な判断だったとは思う。それなのに、いつの間にかこんなにも彼に惹かれるようになっていた。  心地よくてたまらない。温もりも、匂いも、私にはしっくりくる。いや、それ以上だ。  この状況、この雰囲気で、私も彼を抱きしめ返せば、そこでお友達が終わる気がした。だけど、もう少しだけこのなんとも言えない空気感に包まれていたいと思ってしまった。  体はもうとっくに湿り気を帯び、いつでも彼を受け入れられるのに、心が乙女にしがみついている。 「あの──」  言ってから、のそのそと体を離す。 「今度、遊びに行ってもいいですか?」  彼は頬を緩め、「もちろん」だと言った。  この続きは、次までとっておこう。 完 ※正編の【百億円とレンタル時間】 https://estar.jp/novels/25979501 続編の【涙雨】もよろしくお願いします。 https://estar.jp/novels/25985530
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