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ゴミ捨て場まではそれほど遠くない。歩いて5分くらい。
右手で傘をさして、左手にむっちり膨れ上がったゴミ袋を持って、アスファルトの道路を歩く。
道路脇に出来る楕円形の水溜りを見るのは嫌いじゃなかった。水滴が落ちて、輪を大きくしながら広がって、はたまた次の水滴が落ちては、広がる。
雨音しか聞こえない中、孤独の中、それを見ている時間が落ち着く……と言いたいところだったけれど、土砂降りの雨でそれどころでは無かった。
ゴミ捨て場までの途中にある、家一軒分くらいの小さな公園にも無数の水溜りが出来ていた。水溜り同士がくっついて、大きくなって、また大きくなって……1人のときは、そういうものを無性に見ていたくなる。
そうやってあちこちで立ち止まってしまうものだから、ゴミ捨て場に着く頃には、あの天気予報どおりすっかり滝にのまれてしまった。
「んっ、しょ、」
ゴミ袋を捨て場に放り投げ、扉を閉めて、鍵を掛けた。
思いの外、重いな……、なんちゃって。
『おもんな』
雨音にそう、打ち消されたような気がした。雨はいつも冷たくて、無感情だねって、そんな考えが一瞬だけ、過ぎった。
空模様も時間の経過と共にどんどん悪くなっていった。厚い雲が、より一段と厚く、暗く、沈んでいく。
こんな滝の雨の中で自分は何を考えているのか、突っ立ったままなんだ、と思った。思い出した。ごみ捨て任務がさっき完了したんだった。
さっき通った道をもう一度引き返す。
空模様が映るカーブミラー、薄汚れたマンション、遠くの方からかすかに聞こえる雷鳴……。どれも不吉で心をそわそわさせるものばかりだった。
しばらく歩くと、あの小さな公園の前に差し掛かった。
大きな水溜りが1つ、2つ……、奥の方にも――
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