雨音ノート

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 今朝も窓に叩きつける雨音で目を覚ました。昨晩から付けっぱなしにしていた扇風機の風は何となく生温かい。梅雨特有のじめじめした空気に耐えかねてエアコンを動かそうと思ったのに、そういう時に限って壊れているとは思ってもみなかった。とにかく、暑い。  「兄ちゃんおはよ」    ふわふわと浮いていた意識が突如、現実に呼び戻された。  ちなみに眼鏡が無いと何も見えない。かと言って眼鏡を取りに起き上がるほど、朝の体は軽くなかった。休みの日は特に。  「はい、兄ちゃん、めがね」  「ありが……ぅ」  眠気がまだ残っていて体がうまく動かない。手を伸ばして眼鏡を受け取ろうとする前に、いつの間にか掛けられていた。    「装着完了〜!兄ちゃんおはよ」  「はいはいおはよ……怜央は朝早いな」  部活の無い休日の朝くらいゆっくりさせて欲しい。    「はやい?10時になるよ?」    『10時!?』と聞き返そうとした時、その言葉は太い怒号にかき消された。    「起きたー??早くゴミ出しに行って!」  休みの日だと言うのに、いつもとほとんど変わらない、騒がしい朝だった。  「分かってる!これから行く!!」  「ほら、兄ちゃん、ママおこっちゃったよ」  「お前はちょっかい出すなっ」  怜央の小さな頭をコツっと小突いてから、ベッドからようやく起き上がった。  この時初めて、窓の外を見た。薄暗い、厚そうな雲に覆われた空、それから絶えること無く降り続ける雨。バケツをひっくり返したような雨、というのを象徴するような雨模様だった。    「面倒だな、」  机の上のスマホを手に取って天気アプリを立ち上げると、そこには青い傘のマークがずっと先まで並んでいた。  これからどんどん強くなるらしい。    1年の中でやっぱり、梅雨というのはいちばん嫌いだ。          
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