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いい目が出れば簡単だけれど、組み合わせによってはひどいことになる。
例えば僕に英語があたったりしたら、最悪だ。
「サイコロ、見せて」
おーじからサイコロを受けとり、ひとつずつ目を確認する。
名前のサイコロには二面ずつ三人の名前が刻まれていた。誰かに偏ってあたることはなさそうだ。
次に教科のサイコロ。国語、英語、数学、理科、技術、社会とそれぞれの面に別の教科が刻まれているし、とんでもない教科が入っていたりもしない。
これも特に問題はなさそうだった。
最後に点数。これだけは均等にはなっていなかった。
「百点もあるの……?」
刻まれていたのは、百点がひとつ、九十点がふたつ、八十点がふたつ、それから五十点がひとつだった。
「かわりに五十点も用意したから、不公平ではないだろ?」
まあねとうなずいて、手の中でサイコロを転がしてみる。
百点なんて出ようものなら、得意な教科でもまず取れない。
おーじの言うとおり、反対に五十点があるので、不公平ではないのかもしれないけれど。
「なあこれ、誰が振るんだ?」
「公平を期すためにぼくが振るよ」
「おかしいな。公平っていうなら、無関係かつ操られてないやつが振るのが筋だろ」
「ふふん、この学校にそんな人は一人もいないのにかい?」
「うそでしょ、一人もいないの?」
「ちょっと貸せ」
言われて、ジューデンにサイコロを渡す。
「なあこれ、試しに振ってもいいよな?」
「え!」
「露骨に慌てるなんてますます怪しいな。てい」
ジューデンがみっつのサイコロを地面に放る。
出た目はりんこ、英語、百点だった。
「かける、お前も振れ」
「とあ」
出た目はりんこ、技術、百点。
「教科はランダムみたいだけど、どう見てもりんこに百点取らせたいってことだよね?」
「彼女ならやりとげてくれると思わないかい? 親友なんだ、信じて託そうじゃないか」
「お前が言うなっつうの。少しは罪悪感とかねえのかよ。このサイコロは駄目だな」
「放課後、誰もイカサマできないようにみんなで買いに行こうか。おーじのお金で」
「待ってくれ、宇宙人に地球のお金を出させるのかい?」
「試練の準備にかかるお金を、僕たちが出すのはおかしくない? 制服とかも普通に着てるし、お金がないわけじゃないんでしょ?」
「そうだよな。ちゃんとりんこも呼んでフェアにいこうぜ」
「そうと決まれば、学校が終わり次第、駅前の公園に集合だ! 放課後に友達と遊びに行くとか、一回やってみたかったんだ」
「なんでお前のテンションが上がってんだ。遊びに行くんじゃねえからな。サイコロ買って、誰かに頼んで振ってもらって、すぐ帰るぞ」
ジューデンのおかげで、イカサマされなくて済んだのはよかったけれど、なんだかおかしな流れになってきた。
「そうだ、せっかくだからクレープとか食べて帰らない? ぼく、チョコバナナクレープを食べてみたいなあ」
「おいしいよね、チョコバナナ」
「かける、甘やかすんじゃねえよ。そんなん一人で食えっつうの」
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