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1.宇宙王子にご用心!
学校から帰ると、近所の公園にミステリーサークルができていた。
踏みいっていくには少し勇気がいるくらい、草ぼうぼうの公園だ。
思いきり背を伸ばした草たちが、見事にしなって幾何学模様を作っている。
大きな円を中心に、そのまわりを飾るようにして、小さな円がみっつ。
今朝、ここをとおったときにはなかったよね?
僕は、いっしょに歩いてきた幼なじみのジューデン、りんこと顔を見合わせる。
この道は、通学路からは少し外れているけれど、少しだけ早く帰れる近道になっている。
中学校の校門をくぐったら、大通りをまっすぐ歩く。
ふたつめの交差点をあえてとおりすぎて、見逃しそうなほど細いみっつめの角を右へ曲がる。
細い道は両側を塀に囲まれていて、古くなったアスファルトの上を踏んでいくと、ざくざく音がする。
途中には、僕たちがちょうど足をとめている草ぼうぼうの公園とか、小さな神社とか、開いている方が珍しい駄菓子屋なんかがある。
今はもう慣れてしまったけれど、最初はちょっとした冒険気分でわくわくしたものだった。
「なに、あれ」
ミステリーサークルに、最初に気づいたのはりんこだった。
前下がりのボブを揺らして、大きな目をさらに大きく見開いて、草ぼうぼうの公園を指さした。
勉強や運動よりも、本を読んだり絵を描いたりしている方が好きといつも言っているだけあって、僕たちよりも細かいことによく気がつく。
この近道を最初に見つけたのも、りんこだったしね。
「草が、なんか巻いてる……?」
「すげえ。ミステリーサークルじゃん」
「ミステリーサークルって、宇宙人とかの?」
「かける、何時代の常識だよ。ミステリーサークルは人の手で作られてんだって」
ふんぞりかえるジューデンに、思わずむっとする。
ジューデンは中学一年の中では背が高くて、がっしりしている。
あまり背が高くない僕としては、こういうときは特に、見下ろされているようで少し悔しい。
最近、好きな映画の影響だとかで言葉遣いが荒くなったのと、うんちく好きなのがたまにキズだけれど、基本的にはいいやつだ。
「こんなのどうやって作るの? っていうかどうしてこんなとこに?」
「それはわかんねえけどさ。誰かが練習でもしたのかも」
ミステリーサークルを作る練習が、どこで役に立つのかさっぱりわからない。
ジューデンの言葉がピンとこなくて、首をひねった。
「なんのための練習?」
「さあ。大会でもあるんじゃね?」
「……ミステリーサークル大会?」
「いや、知らんけど」
「だよね」
「あそこ、誰かいるね」
りんこの視線の先へ目をやると、ミステリーサークルの端っこに、確かに誰かがいるようだった。
よく見れば同い年くらいの、遠目に見ても、ジューデンより背の高そうな男の子だ。
ジューデンはがっしりした感じだけれど、男の子はシュっとしていて、線が細い。
綺麗な顔、とりんこが思わず漏らすくらいには整った顔立ちで、有無を言わさぬイケメンだった。
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