〈届かぬ想い〉

7/12
前へ
/352ページ
次へ
 轟々と火の手が上がり、城下の民が容赦なく殺されていた。  城は燃やされ、王都・渓水は火の海となる。  そうして鷲国は冬雹により、一夜で滅ぼされてしまったのだ。  奴らが引き上げて行く荷車の中に潜り込んだ僕は、朱国の酒に酔った野蛮な兵らの会話を耳にした。  「聞いたか?陛下が鷲国のまだ幼い姫を、奴隷にするって話。」  「ああ、聞いた、聞いた!陛下も悪いお人だよなあ!  あんなチビっこい姫に一体何させんだって話だよ!」  「俺が聞いた話だと、朱国に連れ帰ったら側室にするらしいぜ?」  「はあ?まだあんなチビっこいのを!?  陛下とは一体何歳離れてんの?  ここだけの話、陛下はとんだケダモノだな!  あははは!」    笑うな!  野蛮な朱国兵め……!    氷水は朱国の下衆な皇帝の側室になるような娘ではない!!  彼女は…どこかの高貴な方と結婚して、幸せになるんだ!    だから氷水に触るな……任冬雹!!
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

455人が本棚に入れています
本棚に追加