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僕と一緒に逃げよう、氷水。
———その年の春、僕らは気付けば共に25歳を超えていた。
その日はたまたま官位の推薦があり、それまでに僕は下級文官の九品官から徐々に官位を上げ、気付けば三品官まで昇給していた。
上司に頭の良さを買われたのだ。
お陰で気分が良く、氷水の好きな青くて小さな花弁のついた花を買いに城下に出掛けた。
今ならなんでも成功する気がした。
…この花を渡して、今日こそは氷水に好きだと告白しよう。
そして、一緒に逃げようって言うんだ。
子を置いて僕と静かに暮らそうって。
君を必ず幸せにするから、氷水。
氷水。
………好きだよ。
——————けれど僕が宮廷に戻ると、そこにはたった今処刑されて地面に転がっていた頭部と、腕を後ろに縛られた、首のない体がまだ座った状態で残されていた。
「びん…すい……?」
……花が散っていく。
朱城の罪人を裁く赤き大門の下。
君のしなやかな身体は真っ赤に染まり。
遠くからそれを眺めている兵や文官達が騒いでいた。
「……太子様の首を絞めたそうだ。」
「異例の処刑法だって。」
「皇后様をだぞ?しかも即日にこんなに呆気なく刑に処すなんてなぁ。」
「噂では…貴人の由麗麗様が陛下に処刑するよう進言したって………」
役人達が現場を片付け閑散とする中で、そこに吸い寄せられるように近寄って行った。
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