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…君に好きと言うと決めたよ、氷水。
今まで勇気がなくてごめんね。
好きだよ。
ずっと大好きだったよ。氷水。
その滑らかな髪に触れ……
口付けをしたかった。
その白い柔肌に触れたかった。
ねえ…氷水、僕を見て…?
そう問いかけたけれど…美しかった君の目は瞼が堅く閉じていて、もう開くことがなかった。
君の笑う顔はもう何処にも存在しない。
処刑が終わった後も今だに首筋から流れる赤い血が、落として散らせてしまった青い花の上にポツリ、ポツリと垂れている。
真っ青で、そこにまるで置物のように残されている氷水の頭部。
僕はそれに向かって話しかけていた。
「…君の好きな花だよ…?氷水。
綺麗だよね……。
ねえ、氷水。僕と行こう?
……こんな憎い国も、憎い子も捨てて。」
舞い散る花びらが、役人達に無惨に踏み潰されていく。
誰も泣いてる文官など気にも止めず、慌ただしく動いている。
「……ッ!!氷水……好きだよ。
好きだ、好きだった!
ずっと好きだったよ!!
早く……もっと早く打ち明けていたら…ッ」
……君は笑って僕の手を取り、一緒に逃げてくれたかな?
「氷水…………ッ。」
僕の目から流れ落ちる涙と同じ様に、一枚、二枚、三枚…儚くひらりと花が散る。
僕の愛おしい人の命が散ったのを報せるみたいに。
…………………生き返ればいいのに。
そうだ、氷水をあの伝説の禁術【転魂送宿】のように蘇らせればいいんだ。
僕は妖術一家の血を受け継いでるのだから、何かきっと氷水を蘇らせる方法があるはずだ。
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