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〈一緒に行こう〉
だがどれだけ懸命に蘇生術を探しても、乱家に伝わる妖術では「人を殺す」ことはできても「人を蘇らせる」方法はなかった。
こんな時に…自分に「天果」の力さえ有れば良かったのに……!
そうしている間にも四十九日の間に氷水の魂が、俗世を離れてしまうという現実に焦り始めた。
頭部は朱城の罪人を裁く大門前に晒されて常に見張りが付き、腐敗が進んでしまった。
首から下の彼女の遺体は激しく燃える炎の中に投下されて、砂粒ほど粉々となった。
その遺骨さえ乱雑に扱われてどこかに打ち捨てられたという。
…大好きな人を蘇らせる事も、大好きな人の遺体を手に入れる事も叶わないなんて。
僕は何て無力なんだ。
君の笑顔をもう一度見たいのに。
君に触れたいのに。
好きだと…告げたいのに………
僕の想いはもう君に届かない。
行き場を失くした想いだけが虚しく心を抉り続ける。
氷水。
好きだよ。
少年の頃からの想いはいつの間にか、愛に変わっていたんだね。
狂おしいくらいに。
もう二度と触れる事が叶わない彼女を深く、深く、愛してると思い知るばかり。
そうして全てに絶望した僕はある結論に達した。
………氷水。
君の命を奪った冬雹を、君の代わりに僕が殺そう。
処刑を促した由麗麗を、君の代わりに僕が殺そう。
君を死に至らしめた原因の太子を、僕が代わりに殺そう。
我が子を愛したばかりに君は決断できず、ずっと苦しんでいたよね。
君の命は結局、愛を向けたその子に奪われたんだ。
そうだよね…?氷水。
………………………愛しているよ。
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