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「っ………!」
————術を発動させた劉帆。途端に玲の左腕にまた青炎が発生した。
礼夏が玲の身体に触れた時に、術を仕込んでいたのだ。
とっさに雲嵐を庇って突き放す。
「玲……!」
「だい、じょうぶ…です、陛…下っ。」
青炎は熱く、耐え難い熱さがあるはずだ。
しかし玲はやけに、大丈夫だという自信に満ちた顔をしている。
「ふっ……んっ!!」
気合いを入れた玲は、自身に纏わりついた青炎を吹き飛ばし、皮膚に浸透した火傷の跡を瞬時に元へと再生させてしまう。
「……おおっ。やればできるわね?」
劉帆だけに限らず、それを見た誰もが目を疑い思わず呆けている。
しかし雲嵐だけは違った。
嬉しそうに含み笑いをし、この世で最も偉大な朱国皇帝の、唯一無二の妻であると、全ての者に知らしめるように宣言した。
「さすがは俺の妻だ…!
お前が無敵なら俺に怖いものはもう何もないぞ、玲!」
「はい、陛下………!」
二人一緒ならばもう何も怖くないという顔をする。
「今世は、わりと不死身な躰なのね!
最高の躰だわ!」
と、玲は微笑んでいる。
まるでようやくこれで自由に戦えると言ったように笑う雲嵐。
これまでにない覇気を使い、それまで燻っていた小さな青炎さえも吹き飛ばしてしまった。
そうしている間にも雲嵐は、自身の持つ皇帝の剣を劉帆の喉元へと向けていた。
誰もがその素早さを目で追えないほどに。
「………その力…まさか「天果」?」
劉帆が力なく問う。
「……そうだ。」
全ての炎が掻き消され、勢いを失った劉帆が地面に両膝を着き、雲嵐を虚な表情をして見上げた。
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