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もはや、今この男に怖いものは無いだろう。
唯一愛する者がまるで不死身のようになったのなら、それは弱点にはなり得ないのだから。
炎が収まったお陰で命拾いした皇太后の腕を掴み、一気に引き上げると、劉帆は彼女の首周りに手を回し、今度は羽交締めにした。
「劉…帆……ッ」
皮膚は焼け爛れ、見るも痛々しい皇太后の体を盾代わりにするように。
「金劉帆!まだ抵抗する気ですか!?
速やかに皇太后様を離し投降を……!」
緊迫する空気の中で憂炎らが叫んだ。
………投降して一体何になる?
どうせすぐにこの男の手によって殺されるというのに?
私の生きる理由は、氷水を失ったあの日からずっと復讐だけだった。
ならばもう……生きる理由などない。
初めから……氷水を失ったあの日から私の心はもうずっと、打ち滅んでいた。
「金……劉帆………!
母上を蘇らせればとは、どういう意味だ!
答えろ!!」
…喚くな任雲嵐。
私から大切な人を奪った冬雹のような容姿をして、氷水のことを呼ぶんじゃない。
お前がいなければあの人は死ななかった。
お前さえ愛さなければ……
あの人は今も………………
「劉帆!!!」
「ギャアアアアアッ!」
皇太后を逃さないようしっかりと抱き止めた劉帆は、己の身体に術をかけて激しい青炎を起こした。
息も絶え絶えだった皇太后の命が、先に尽きていく。
「くっ……!」
「陛下、危ないです、下がって……!」
理解できない劉帆の言葉に戸惑う雲嵐を、青炎から庇うように玲が引き留める。
「死ぬつもりか……金劉帆!
俺にその胸の内を何一つ晒すこともせずにか……!」
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