自宅訪問【拓人+千里】

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自宅訪問【拓人+千里】

大学二年の冬。 まだ本格的に就職活動も始まらず、講義もものすごく専門的というわけではなく、部活でもまだキャプテンとして立ってはいなくて…すべてが中途半端な時期。 凌太郎と、殿前のウインターカップを立ち上げて、ヒロの力も借りて来月実施の準備が着々と進んでいるこのタイミングで、ちょっと前から考えてたことを千里に言ってみた。 「千里の家って…行ってもいい?」 久々にホテルに連れ込んであれこれした後、帰る用意をしながらのタイミングだ。 千里は、なぜかポッと赤くなってうつむいてしまった。 …あれ、嫌か? 実は小心者で、細かいことを気にがちな俺の本性がドキッとする。 千里がそういうのを恥ずかしがることは知ってるし、無理する気もないから今まで言わなかったんだけど。そろそろ…顔見せに行った方がいいような気がするんだよ。 でも、千里は俺のそんな心の動きにすら気づいてくれるから。 ゆっくり近づいてきて、キュッと胸に抱き着いてくれた。 「…あのね、嫌とかじゃないよ。 すごく、嬉しい。 …けど、本当に初めてで…どうしていいかわからなかっただけで」 もうホント、部屋から出したくない。 清算しちゃったから、出ないわけにはいかないけれど。 仕方ないからチュッと頬にキスを落として、千里と手をつないで部屋を出た。 最寄り駅まで帰ってきてから喫茶店に寄って、予定を詰める。 思い立ったらさっさと決めてしまわないと、明日から平日が始まったらまたあっという間に時間が過ぎちゃうから。 「仕事の休みは、土日だけだよな。 年末とか…迷惑かな?」 俺は基本的に週末は部活だから、それもあって今まで行けずにいたんだ。 でも、千里の弟が殿前にいるのをわかってて、俺がイベントの中心にいるんだから、このまま何の挨拶もなくグランドで初対面…ってのはよくないと思ったし。
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