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その後、お父さんが言った通り悠哉がちょっとおとなしくなったので、お父さんとも話ができた。
「お父さん、スポーツ…してますか?」
ずっと気になってたことを聞いてみたら、笑って首を振った。
「いや、僕は現役の警察官。
昔は柔道とか、一通り身体を動かすことはやったけどね。
今は趣味程度だよ」
警察。
見た感じと態度の軽さと、人当たりの良さで…かなり意外だった。
「意外でしょ?」
お母さんが笑いながら、俺の気持ちを代弁してくれた。
はいとも言えなくて、笑ってごまかす。
でも、下手なことして投げられたりしないように気を付けないと。
俺は高校の必修授業で一応柔道を選択したけど、受け身をとっても床に落ちたときに痛いのがすごく嫌で、できる限りうまいやつと組まないで済むように立ち回ってた。
お母さんは、弁護士さんなんだって。
法学部出身の夫婦なんだな。
千里は、自分の父親に似た男を選んだんだろうか…と思うくらい、千里のお父さんは俺とタイプがよく似てた。
俺よりも、根本的に明るくて人当たりはいいんだけど、話も合うし、テンポの軽さがすごく近い。
大学のことや、殿前のことをたくさんしゃべって、夕方近くなってきたので、『そろそろ…』と席を立つ。
俺の方も、重い話をするつもりでは来てないし、一応顔を出して挨拶ができたらそれでいいと思ってた。千里の両親も多分そんな感じだから、そのまま帰ってもよかったんだけど。
一応と思って、立ち上がってお父さんとお母さんに伝えておいた。
「大学生なので、先のことを約束したりは、まだできないですけど。
俺は、これからも千里と…真剣に付き合っていきたいと思っています。
信用してもらえるように、努力します。
よろしく…お願いします」
それだけ言って、頭を下げておいた。
二人とも、笑顔で受け入れてくれた。
裕哉がサインサインとうるさかったけど、さすがに途中で千里が雑誌を取り上げて説教してくれた。
それでもぶぅぶぅ言ってる裕哉を、しょうがないからちょっと指で呼んで、部屋の隅で肩を抱いて内緒話の体制に持ち込んだ。
「この先、俺が姉ちゃんの彼氏としてここに出入りするのと、今サインして今後一切他人としてふるまうのと、どっちか選べ」
親がいるから家族としてふるまったけど、一応学校で会えば先輩後輩だしな。
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