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長男の卒業【凌太郎×結花】
「え」
大学3年の秋、結花からよくわからない誘いを受けた。
「…もう一回言って?」
さっきまで俺のベッドで仲良くしてて、そろそろ夕食の用意をしようと思って俺が服を着て先に台所に移動したところ。
ザァッと米をセットしたあたりで聞こえてきた結花の言葉が、一瞬理解できなかった。
手元の音と重なって、聞き間違えたかな。
結花もクスクス笑いながら、食卓のテーブルの上に広げた新聞を片付けながら教えてくれる。
「だから、ヒロちゃんが結婚するから、凌を友人枠でなら招待してやるけど、どうするって」
「…」
ちなみに『ヒロちゃん』というのは、当然俺たちの同級生マネだったヒロのこと…ではない。結花の一番上の兄さんで、健太さんの元先輩同僚でもある長瀬弘道さん。
健太さんが就職した時に同じ学校に配属されて、三年くらい一緒に働いたのかな。今年の春に、弘道さんが異動になったって聞いてた。
俺よりも6つ上だから、結婚したって全然おかしくないんだけど。実際、弘道さんより一つ年下のはずの健太さんは、俺が大学二年の春に結婚してるんだし。
…いや、やっぱりおかしいだろ。
「え、どうしちゃったの? 弘道さん」
対象者に言うことでもないだろうからはっきり言葉にはしないけど、あの人重度のシスコンだったよな。
かなりやばいレベルと認識してたから、結花と付き合い始めた当初の俺は敢えて弘道さんとは関わらないようにしてたくらい。健太さんの披露宴パーティで遭遇して、意外とあっさりしてたから驚いたんだけど…
でも、長瀬家は全体的に結花に対する気持ちが強いから。それからもちらちらとプレッシャーを掛けられていることを感じ取ってはいたわけで。
俺としては、結花の家族はいずれ自分の家族になるんだから、それなりに礼儀正しく接するつもりでいたんだけどな。
下から順番に余計なちょっかいばっかり出してくる兄たちで、多少めんどくさかった。
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