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俺より大事?【凌太郎+結花】
大学三年生の冬が近づいて来た。
公式大会が始まるのは、年度末に近くなってからだから、毎年この季節はちょっとゆっくりできる。
結花と休みを合わせてなるべく外でデートの機会を作り、来年から本格的に始まる臨床の準備も進めて。
合間で健斗と連絡を取り合って練習計画を確認し、忙しいながらも充実した大学生活を送っている。
そんなある日、うちに来ていた結花から一枚の葉書を見せられた。
「凌…来月の8日、出かけようって約束したんだけど…変更してもらってもいい?」
申し訳なさそうな口調だけど、なんだか楽しそう。
…なんだろ。
受け取って文面に目を通すと、
「…同窓会?」
・・・・・・・・・・・・・・
殿前高校20××年卒業3年A組
同窓会のご案内
・・・・・・・・・・・・・・
事務的な書面で、日時や場所まで記されている。
「…卒業してまだ一年半なのに、早いね」
自分の正直な気持ちをそのまま口にしてしまわないために、そんなことを呟いてみた。
俺たちは推薦クラスだったから、それぞれが自分の成績やチームの結果の方を大事にしていて、クラスの団結というのは結構緩い感じだった。
時々、まだ生きてるクラスのメッセージグループで誰が全国のいいとこまで行ってるとか、情報は回ってくるけど、全員で集まろうっていうのは…ない。
結花は、そんな俺の微妙な感情に珍しく気づかないみたいで、にこにこしてる。
「遠いし、迷ってたんだけど。
昨日、千里が一緒に行こうって連絡くれたから。
久しぶりだし、行ってこようと思って」
…ダメとか、言えるわけないよな。
俺が毎週末、練習だ試合だと飛び回ってるし、結花も可能な限り帯同してくれてるから、部活が休みで結花も他の用事が入っていない週末はすごく貴重だ。
俺としては、勉強の合間にあちこち検索して、どこに出かけようかピックアップしてたんだけど…
「ん。わかった」
ここで自分を優先しろとか言うほどのダメ男じゃない…と思いたい、自分へのプライド。
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