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でも、婚約してから何年も離れてたんだから、結婚してからの兄貴にはこっちからは誘いをかけないことにしてる。
だって、俺が頼み事をしたら、多分兄貴は応じてくれるけど、その過程でもし若ちゃんとの約束を変更することになっちゃったりしたら…後が怖い。
ちゃんと俺の希望は通してくれるし、文句を言ったり直接怒ったりしないのもわかってるけど、俺の方が借りを作りたくないというか。
若ちゃんがとばっちりを受けて…大変な目にあっても申し訳ない。
というわけで、同じ新婚さんではあるけれどもう二年目に入っている健太さんに要請する。
兄貴にも何度か言われたけど、俺の性格は兄貴より健太さんに近い。
何か話してても、『あ~、わかる!』って思うことが多いし。それでいて大人だから、自分の失敗したこととか、どうやってリカバリーしたかとか話してもらうと、すごく楽しいんだ。
そこに兄貴が入ると、俺と健太さんがチラチラと突っ込まれることになるんだけど、それがまた絶妙で。
俺は三人でしゃべるのが、かなり好き。
健太さんから、
『慎太郎は誘わない方がいい?』
って聞かれたから、そんなことはないと返事をしておく。
俺が誘って、タイミングが悪かったらやばいと思って遠慮してるだけ。
『別にいいよ。忙しいかと思っただけ』
というわけで、健太さんに兄貴を誘うかどうかを丸投げしておいた。
高二の冬に怪我をして以来、兄貴と健太さんと三人で会ったり話をしたことは何度かある。
その中で、わかったことが一つ。
兄貴は、健太さんのことを心底信頼してる。
いざとなったら、若ちゃんのことを預けられるくらい。
もちろん健太さんは若ちゃんに対して、友人以上の感情はまったくないし、健太さんには祥子さんがいるんだけど。
でも、俺のことは…多分どこかで、そういう意味では信頼していない。
兄として、保護者として、どれほどの愛情をもらってきたかはわかってるんだ。でも、最後の最後で、俺が若ちゃんをそういう目で見る可能性を、兄貴は捨ててない気がする。
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