3人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
自分が動こうと心に決めたところで、それはなかなかぴったりだ。
「それ! やってくる!」
俺は結花が初めての恋人だし、それも学校と自室とグランドの三角形くらいしか使わない生活をしてしまっているから、世の中のイベントに疎い。
それじゃだめだと思って、ちょっとずつ努力はしてるけど…結花もどちらかというとあまりイベントごとに興味がないこともあって、やっぱり二人して引き込みり気味だ。
外で待ち合わせとか、ほとんどしたことないし。
サプライズで俺が待ってたりしたら、結花は喜んでくれるだろうか。
…がっかりされたりしたらちょっと立ち直れないかもしれないから、直前にメール入れるくらいはした方がいいかな。
ワクワクしていると、兄貴から指導が入った。
「…お前、下の学年に顔割れてんじゃないの?」
兄貴は、俺よりもそういうところで嫌な思いをたくさんしてきてるみたいだからな。心配してくれてる気持ちはわかる。
でも、俺は大丈夫。
「割れてるよ。俺が卒業した時に結花とのことを公言したら、頼むからやめてくれって言われたし。
でも…ここで使わないでいつ使うんだよ。他に使い道ないだろ、こんな顔と身長」
失敗を引きずらないで、すぐに前を向けるのが、俺の長所。
「…お前がいいならいいけど」
兄貴も呆れたように笑って、付け足してくれた。
「あ、お前が女に絡まれてるとこに鉢合わせて修羅場、とか気を付けろよ」
ハッとする。
そうか。
結花に言わずにサプライズで待ってるってことは、そういう危険が潜んでいるということだ。
素直に頷いて、二人に手を振ってから最寄り駅に向かって走り始めた。
最初のコメントを投稿しよう!