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その日は久々に、夕食の時間に家族四人がそろってたから、一応言っておくかと思って情報開示した。
「今度、彼女の家に挨拶に行ってくるから」
俺が何の前置きもなくそんなことを言ったので、両親はポカンとして俺の顔を見つめてきた。
と思ったら。
どこのお嬢さんだ。
うちには連れてきてくれないのか。
いつからお付き合いしてるんだ。
この先の予定は。
手土産は何を。
…次から次へと、怒涛のように問い詰められてしまった。
え、俺に彼女がいるって、気が付いてなかった?
ってことはなに、俺が家を空けてる時間は全部大学の講義か部活だと思ってたってこと?
那奈がクスクス笑いながら、とまどってる俺の代わりに説明してくれた。
「殿前時代の、一つ下のマネージャーの子。
拓人が大学に入ったあたりから付き合ってる。
真面目で一生懸命で、すごくいい子だよ」
両親は、俺よりも那奈に聞いた方が情報が出てくると気づいたようで、那奈にあれこれと聞き始めた。
…あんまり変なこと言うなよ。
普段だったらさっさと自室に戻るんだけど、さすがにやばいことを言われそうになったら介入しないとと思って、リビングに腰を落ち着けた。
「…小中と一緒だったけど、それに気づいたのは高校の途中くらい。
彼女…千里の家が引っ越してるから、今は駅の反対側? って言ったっけ」
時々那奈から聞かれて、返事をする。
「ん。歩いてもここから30分くらい」
前の家は3分歩いたとこだった…とか、言わない方がいいだろう。
うちに連れ込んだと疑われることにつながったらやばいし。
ヒマだからソファから床に降りて、ストレッチを始める。
俺は身体が柔らかくはないから、日常的に気を付けておかないと、怪我につながると大塚先生からも言われてる。
大学に進んでからは、試合に出られないような大きな怪我はしてないけど、凌太郎と一緒に時々大塚先生のところには遊びに行くから。
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