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千里は予想してたみたいに頷いてる。
「…だよね。
私たちも、そんなにもめたことはなかったんだよ。
基本は拓人が譲ってくれるってのもあったし、やっぱり同じところで高校時代を過ごしたからかもしれないけど、基本的な考え方が似てるから、意見が食い違うことも多くなかった」
そう。
子供から大人に成長する高校時代の価値観は、すごく大きいと思う。
特に私たちは同じ部で長い時間を共に過ごしたから、同じ大人の影響を受けているし、だからこそ考え方が似通ってくる。
私が凌のことを怒るのだって、試合中に無茶をしたとか、最近はしないけど嘘をついて部活を休んだとか…あとは平常時にベッドで無茶苦茶をしたとか、そんな程度。
私が怒って、凌が納得して『ごめんなさい』をして、『いいよ』で仲直り。
もう、半分お約束のやりとりになりつつある。
部活のことは基本的に凌の意見を通す方向で私がフォローするし、そのほかのことは凌が全面的に私の希望を聞いてくるから、揉める要素がないという面もある。
「何があったの…って聞いてもいい?」
力になれることならなりたいと思う。
千里は軽くため息をついて話してくれた。
「冬休みにさ、二・三日オフの日があるから…近場で旅行に行こうって、誘われたの。
私は…今更二人で泊まるのが嫌だとかそんなことは思ってないんだけど、ただ、どうしても家族に嘘をつかなきゃいけないじゃない。
それがちょっと…嫌で。
考えさせてって…言ったの」
「…うん」
それは千里が正しい…というか、私だって同じ立場だったら同じ返事をすると思う。そしてそれはある意味、断り文句と受け取ってもらってもいい返事だ。
後輩のインハイを応援に行くとか、凌の頂上決戦を応援に行くとか、正当な理由があればまだいいんだよ。何もなしに…彼氏と旅行に行きますとは、言えないよね。
大会関係は、ちょっと調べれば日程や試合会場が公表されてるから、お互いにちゃんとアリバイになるし。
たとえ、『誰と』行くという情報部分に多少の嘘やごまかしがあったとしても、それは私としてもまぁありかな…と思える。
「平日はお互いバタバタしてて、その話はそこまでになったと思ってたんだけど、次の週末に会ったら…もう宿を確保してあってさ」
…出た。北見先輩のフライング。
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