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「…千里、一人で閉じこもっちゃだめだよ。
宿代が高いのが気になってるってことと、親になんて言おうか考えてたっていうことをちゃんと言葉で伝えないと。
何も言わずにいたら、千里に旅行を嫌がられたんだと思われちゃうよ?」
北見先輩も、ちゃんと千里に確認してからにしなかったのはちょっとよくないと思うけど。
話せば解決することじゃないのかな。
北見先輩は、千里のことが大好きで、ものすごく大事にしてる。
そこは、私も今は疑っていないから。
千里は、はっとした表情で私を見返してる。
「…そうだね。また…私、同じ失敗をしてるんだ」
千里は、北見先輩に対して言葉が足りないところがあるかもしれない。
私もおしゃべりは苦手な方だけど、凌に対してだけはペラペラと何でもしゃべれるのよね。でも千里は逆で、いまだに北見先輩に対して一線引いてしまってるのかな。
「…その後、言い争いになったりしたの?」
北見先輩ならそんなことにはならないだろうと思いつつ、ドキドキして聞いてみた。
「ううん、私が怒ったらきょとんとしてて、何で怒ってんの? みたいな感じで。終電が近いような時間帯に地元駅で話してたから、そのまま別れて一人で走って帰っちゃった」
ああ、じゃぁ北見先輩はそれからずっとしょげてるのかもしれないな。
もしかして凌にヘルプがいったりしているんだろうか。帰りに連絡するときに、ちょっと探りを入れてみようかな。
凌は…多分そういう相談を持ち掛けてもあんまり役に立つアドバイスはできないんじゃないだろうか。
「千里、今夜にでもちゃんと連絡して、会って話す機会を作らないと」
もう千里もちゃんとわかってるだろうけど、そう忠告しておく。
そろそろ同窓会の集合時間が近づいてきてるから、どちらからともなく立ち上がって、コーヒーカップを下膳口まで下げに行く。
「ん。そうする。
結花ちゃん、聞いてくれてありがと」
千里がにこっとすると、高校の頃と全然変わらなくてかわいい。
私が最初に『この子と友達になりたいな』って思ったときも、この笑顔だったな。
あとは近況報告をしあいながら同窓会の会場にたどり着き、受付を済ませたら旧友の顔がちらほらと見える。
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