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「俺さ、カッコつけて結花のこと送り出したくせに、留守番が寂しくて。
健太さんの部屋で兄貴と三人で飲んでたんだよ。
そしたら…数年ぶりの同窓会くらい気持ちよく行かせてやれって、怒られて。
でも終わる時間に迎えに行くくらいはいいんじゃないのって、教えてもらったんだ」
うん、正直…凌がこんなことするとは思ってなかったから、びっくりした。
きっと教えたのは、慎太郎さんじゃなくて健太さんなんだろうな。
慎太郎さんは、プライドが高いから…そこまではしないイメージ。
別に健太さんがそうじゃないというわけではなくて、でも健太さんの方が彼女を溺愛して甘やかしてる雰囲気だよね。
「拓人とは待ち合わせたわけじゃないんだけど、移動途中で『何してる?』ってメールしてみたら…ちょっと深刻なことになってたらしくて。
でも『俺今から出待ちしに行くけど』って言ったら、便乗してきた」
早めに着いて、駅前の喫茶店でちょっとしゃべってたんだって。
もしかして、私たちが行きに入ったのと同じところだな。
それを聞いて、思わず言い返してしまった。
「…それ、凌たちのほうがナンパとかされたんじゃないの?
私たちは、特進クラスの同窓会なんだから、全然そんな心配いらないのに。
むしろ凌たちが二人そろってあんな繁華街の駅前の喫茶店でお茶とか、絶対きれいなお姉さんに声かけられたりしたでしょう」
ちょっと唇を尖らせて言ってみた。
「…」
沈黙は時にすごく雄弁だ。
まぁ、二人がそんな誘いに応じるわけがないのはわかってるんだけどね。
「…私も、千里から事情を聞いたよ。
私は千里からの話を聞いただけだけど、多分大丈夫だと思う」
北見先輩は、凌と似た感じで内面は激しい人だということを知ってはいる。
でもやっぱり同じように、普段は穏やかで…私たちのことを心から尊重してくれる人だから。
千里が誠実に言葉を尽くせば、きちんと受け取ってくれる。
千里が自分の失敗にちゃんと気が付いて、言葉を尽くそうと思っているんだから、北見先輩はそれをちゃんと聞いて、反省するところはして、仲直りすればいい。
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