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やっぱり一緒にいたいから【拓人+千里】
大学三年の秋が終わる。
この三年で、俺は大学サッカー部をリーグの上の方までひっぱりあげた。
それでも、正月にJリーグと競うようなチームにはなれないし、そこまで目指すつもりもない。
大学まで本気でサッカーをやっていること自体、俺にとっては驚くようなことなんだ。
多分、来年一年で飛躍することもないだろうけど、十分満足してる。
高校を卒業した時点で、凌太郎とのつながりを切ってしまいたくなくて、サッカー部に入部して…流れでチームを率いて来たけど、もう十分だな。
あと一年、めいっぱい努力はするけど。
そこで、俺のサッカー人生はいったん終了。
ちなみに、木村先輩はなんとプロ選手への道を選んだ。
早い段階から実業団チームを狙うって言ってたんだけど、この間那奈と大ゲンカしたみたい。
木村さんの言い分は、『那奈と一緒に堅実に生きていくために、会社に所属してまず収入を安定させて、会社の名前でサッカーができればいい』ってことだったんだけど。
那奈はそれが許せなかったんだって。
『私と一緒にいるために、可能性を自分から捨てるような人とは付き合っていけない』とか言って、本気で別れを切り出した。
我が姉ながらびっくりだ。
木村さんから泣きそうなメールが俺に来て。
そんなこと言われても知らんけど。
俺が仲裁する羽目になった。
俺は木村さんの言い分も、実はよくわかる。
一人なら夢を追うのもありかもしれないけど、それでもリスクは大きい。
やれてもあと10年ちょっとだ。
選手生命を終えた後、その期間着実に社会人として生きて来た同級生たちに交じってどう生きていくんだって…俺も思うよ。
家計を維持し続けられるのかという経済面だけではなく、一種芸能人に近い存在になっているプロサッカーを目指すということは…簡単なことじゃない。
派手にデビューして、何年か後に海外のメジャーなチームに移籍して。
実績を残して戻ってきて。
引退後は解説者とか監督とかを目指す?
実力だけでできることじゃない。
もちろん実力は必要だけど、マスコミといい関係を築いてさ、好意的に取り上げてもらって、たくさんの人に応援してもらって、ようやく成り立つ道だ。
少なくとも、俺には無理。
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