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サッカーだけを一生懸命にやっていられるなら、ちょっと魅力はある。
だから、プロじゃなくて露出の少ない実業団っていうのは、現実的で堅実な選択肢の一つだと、俺も思うんだ。
俺自身は、中学でサッカーをやめた時点でサッカーで食っていきたいと思う気持ちは完全に消えたから、大学には一般入試で入ろうと結構早くから決めていた。
凌太郎と組むのはものすごく楽しかったし、幸せな時間だったと思うけど、そこまで。
もしこの先何か考えが変わって、俺が大学卒業後もやりたいと思うようになったとしても、プロはないな。それこそ、企業チームを目指すだろう。
那奈には那奈の考えがあるんだろうし、木村さんが心の奥底でどう思ってたのかは、俺には関係ないことだからあまり突っ込んでは聞かなかった。二人で話し合って、二人が納得するなら別にそれでいい。
そんなことがありながら、他人ごとではなくて。
俺もあと半年弱チームを率いたら引退して、就職活動が始まる。
体育会系だし、実績も十分積んできてるから…正直、どこかには決まるだろうと思ってる。
時代遅れかもしれないけど、一応名の通った大学で体育会系運動部を率いた実績というのは、まだまだある程度評価してもらえる。
俺は部活をやりながらも、自分の所属先での勉強は一応ちゃんとやってるんだ。木村先輩と違って、俺は大学に一般入試で入ってるから、しかも理系。
趣味として、時々フットサルで遊ぶとか、そういうレベルで続けていけたらいいなとは思うけど。
で、俺としては順調に過ごしていると思ってたんだけど。
つまんないことで千里とケンカしちゃって。
普段だったらさらっと流して仲直りできるのに、なんか俺も意地を張ったもんだから…長引いてる。
千里は、普段からお姉さん気質で、俺がバカなことをやっても笑って許してくれるから、俺も調子に乗ったかもしれないんだけど。
千里は絶対俺から離れて行かないって、なんの根拠もなく思い込んでたのかもしれない。
一週間会えないとかは時々あったんだ。
最初の頃は時間を合わせて一緒に登校したりしてたけど、千里も忙しくなってきてるし、俺は二限からの日が増えてきてて帰りは相変わらず夜だし。
俺としてはケンカしたことすら忘れてたんだけど、千里はずっとくすぶってたみたいで。
週末に俺が能天気に『明日会える?』って連絡したら、断られちゃった。
『落ち着いて考えたいから、しばらく時間が欲しい』って。
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